幸せになるために
その後の3日間は瞬く間に過ぎ去った。

祝日は図書館自体は開館しているけれど、スタッフは交替で勤務する事になっていて、昨日、23日はオレには休みが割り振られていた。

なので吾妻さんに宣言していた通りスーパーに赴き、シチュー用の肉と、玉ねぎを日々の食事で消費してしまっていたのでそれを買い足し、使い捨ての皿やコップ、そしてお子様でも飲めるという触れ込みのシャンパンを購入して来た。

そして家に帰って再びシチュー作りに挑戦。

一度作業しているので手順は頭に入っていたし、スムーズに調理を終える事ができ、味も申し分なく仕上がった。

あとは、予約しておいたオードブルを受け取って、と…。

勤務を終え、足早に家路を辿りながら心の中で呟く。

聖くんの存在に気付いてから約1ヶ月。

とうとうこの日を迎えてしまった。

あっという間の日々だった。

あの子ともっと、触れあいたかった。

本音を言えば、ずっとそばに居て欲しいと思う。

だけどそれは許されない事だから。

本来、天に昇るべき魂をこの世に留めておくような、自然の摂理に反する行為は。

だからやり遂げなくちゃいけない。

逃げる訳にはいかない。

あの部屋で15年間、誰にも気付かれず、一人で孤独に耐えながら、夢見ていたお誕生日パーティー。


【5本のろうそくが立てられたケーキを食べて、一つ大人になりたい…】


幼い聖くんの、そのあまりにも控えめでささやかな願いを、奇跡の力によって知り得たオレ達が、叶えてあげなければいけないんだ。

改めて、自分の使命を再認識した所で、コンビニに到着した。

リュックを肩から外しながら、入口のガラス戸を右手で押し開く。


「いらっしゃいませー」


レジカウンターからの、威勢の良い店員の声かけをBGMに、リュックの内ポケットに保管しておいたオードブルの引換券を取り出すと、そのまま声を発した人物の元へと直行した。


「すみません。これ、予約しておいた者なんですが…」


言いながら、カウンター上に券を置く。


「あ、はい。ご予約いただきました、商品のお引き換えですね」


店員の女性は笑顔で券を手に取ると、「少々お待ち下さい」と断りを入れながらカウンターの奥にある小部屋へと消えた。

確か予約した時も、あの女性が対応してくれたんじゃなかったっけ?
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