高梨さんの日常



「…今回の低気圧の影響で、全国的に大雨、暴風に警戒を…」

朝、いつも、公共放送の気象予報をやっている時間に目が覚める。

ゆっくりと準備をしても学校に間に合う時間だ。


どんよりと曇った空を見て、憂鬱になる。

ネックレスをいじりながら食卓に向かって、パンをトースターに入れた。

「それ、キレイね」

母がネックレスを指差してそう言ってくる。

「うん、もらったの」

そう言うと母は少し笑って、よかったね、と言った。

「お菓子のレシピの本ってあったりするかな」

いつもは挨拶くらいしかしないのに、そんなことを聞くからか、母は少し驚いた顔をしたけど、すぐに穏やかな顔になって答えた。

「確か、食器だなの引き出しにあったはずだけど」

そう言うだけで、母は、時計をみて、自分の支度にかかった。


私もトーストを食べ終えて、弁当作りにとりかかる。

昨日の夜予約して炊いておいたご飯と、作り置きしてあるおかず、冷凍食品をそう大きくはない弁当箱に詰めた。

「それだけで足りる?何か買うお金いる?」


いつもと違ってそんなことを話しかけてくるのはさっきレシピ本の居場所を聞いたからだろうか。


「ううん、大丈夫」

そういうと悲しげに目を伏せて、メイクを始めた。


ガチャン。

ドアが閉まる音がして、父が出かけたんだな、とわかる。

母は、じゃあ、といって父がでた数分後に出かけた。

前は一緒に出ていたのにな。


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