君に恋していいですか?
「課長…失恋ですか?」



…憐れむのは勝手だが。


「誰がいつ、失恋したなんて言ったんだよ。妄想と空想は仕事じゃないときにしてくれ。」


盛大に溜息をついてやった。


そんな俺を見て、彼女は不思議そうに首を捻る。


「失恋じゃないなら何故ですか?」


…誰かこいつに分かりやすく説明してやってくれないか。


失恋どころか、もう10年は恋愛なんかしてないってーの。



「…」


呆れて声が出ない俺に彼女は同情するかのように言うのだ。


「髪を短くされたから、失恋かと思ってました。課長、素敵な方だからすぐに次の恋に出逢えますよ。」



…誰か。誰かおらぬか。


「池永、あのな」
「私、応援してますから!」



…ふんわりと笑う彼女の表情を、一瞬でも可愛いと思ってしまった。


立ち去る後姿にもう一度、盛大な溜息をついた。


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