ブルースプリングの心臓
どくんどくん。

自分の心臓の音が、やけに大きく聞こえる。

目を閉じてすぐに、目の前のシンが動く気配を感じた。



「………」



ふわり。届くのは、コーヒーのかおりと、それに混じって、彼の控えめな香水のかおり。

その落ち着く匂いを感じてすぐ、自分のくちびるに、何かあたたかいものが触れたのがわかった。

ぴくん、と一瞬反応してしまうけれど、シンの言葉を守り、3秒間は目を閉じたまま。

そっとそのあたたかさが離れた後、ゆっくりと、目を開けた。



「し、シン、今……っ」



動揺するあたしに、目の前の彼はふっと笑う。

あたしはというと、顔が熱くて、なんだか鼓動が早くて。

見慣れたはずのシンの顔が、なぜかキラキラして見えて。

雨の音が、今度はやけに遠く感じた。



「……どう? 世界、変わった?」



あたしの髪を一房とって、弄びながら彼は笑う。

きっと真っ赤な顔でそれを見上げながら、あたしは口を開いた。



「か、変わった」

「………」

「なんか、あたしもがんばれば、シンと一緒の大学、行けるような気がしてきた」

「うし、その調子だ」



そう言ってまたイタズラっぽい笑顔をみせて、今度はあたしの頭を撫でる。

その心地よい感覚に、うっとりと目を閉じながら。

……とりあえず今は、もっかいキスしてって言ってみようかな、なんて。

そんなことを、考えていた。










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