続・危険なキス
番外編 あなただけ…
 
「紫乃先輩!おめでとうございますー!」
「ありがとう」


3月20日。
慣れない袴を着て、大学を歩く。

周りには、自分を慕ってくれる後輩たちが囲ってくれて
激励の言葉を送ってくれている。


「紫乃先輩にこれから会えないなんて寂しいですっ」
「大丈夫。卒業しても、遊びに来るから」
「ほんとですか?絶対ですよ!!」
「うん」


本人よりも、周りの人たちのほうが涙ぐんでいて
自分が泣くタイミング逃したな……なんてすら思った。



「紫乃ちゃん!集合だって!!」

「うん、分かった」


後ろから、同じように袴を着た沙樹が駆けてきて、


「ごめんね。ちょっと行ってくるから」

「はいっ……。
 あたしたち、外で待ってます!!」


と後輩に一言言って、沙樹の下へ行った。


「相変わらず、紫乃ちゃんは大人気だね」
「そんなことないよ」


沙樹の髪は、もう背中まで伸びていて
パッと見はおしとやかな女の子そのものだ。

中身はまるで変わってないけど。


「じゃあ、行こっか」
「うん」


二人揃って、体育館へ歩き出す。




あたしは今日

T大学を卒業する。
 
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