金色・銀色王子さま


「冗談…か」
ぽつり、呟いた言葉はゲームセンターならではの騒音にかき消された。


でも、かき消されて良かったのかもしれない。
だって、まさかそんな言葉がついて出るとは思わなくて思わず手で口を押さえたし。

何より…

もしかしたらぬいぐるみ取ってくれるんじゃないか

そう願ってしまった。



一瞬でも期待した自分に、恥ずかしさがこみ上げてきて帰り道は口数も自然と減った。
片桐も、半歩前を歩いてマンションに着くまでの道のりほとんど後ろを見ることはなかった。
白い息、かじかむような寒さを手のひらに感じながら、マンションの明かりが見えると内心ホッとした。
気まずさから解放されて少しは冷静になれそう、そう思ってた。




「あら!龍之介くんに麻衣ちゃんじゃないの!久しぶりね~」


たまたま、買い物帰りの大家さんが反対側から歩いてきて笑顔で手を振る。
ひきつった笑顔で麻衣は振り返した。


「あらちょっと、二人揃ってデートでもしてたの~?」

絶対言うと思った。
空気も読まず(むしろ読む気ない?)易々と大家のおばさんは二人の地雷を踏みつけた。
何も言わない龍之介に代わって、麻衣が慌てて説明する。



「いや、今日カイトが大阪行ったので送りに行ったんです!」


「あらっ、カイトくんと昼間ここですれ違って急いでたのに今の時間までいたの?」

大家さんを見る限り純粋に考えた結果の質問そうだったが今の状態は疑ってるようにしか聞こえない。

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