金色・銀色王子さま
「お、お、お、思い出してないっ!!」
ごまかすために口をつけたカフェオレが熱くて、飛び跳ねた。
香織は呆れながら切れ長の目を細めて言う。


「あら~?何その分かりやすい慌てっぷり。さてはその、同じ階のイケメンと何かあったな?」

「な、何もないし!」


………何もないわけない。
だって、あれから。あの日から、カイトが妙にちらつくのだ。部屋にいて物音がしたときとか、仕事に向かう後ろ姿を自然と気にしてしまうのだ。
疑いの目をじっと向ける香織。

「……ただ、一緒にいて楽しかったなぁ…って」


「恋だな、恋!」
香織はやっぱりなと言わんばかりのドヤ顔で足を組む。
端から見たら出来た女だけど、友達から見ればこのキャラ心配になる。



「ねぇ!じゃあ早速デートしなくちゃ」

「い、いいよ~!だって、カイトには沢山女の子いるんだよ?彼女だっているかもしれないじゃん」

「いくら遊んでたってもう28歳の男でしょ?何が遊びで、本気かぐらい分かるでしょ!」


香織はときどき成熟過ぎてすんなり分からない解釈をする。
要するに、私が本気で行けば相手にも分かる、ということだろうか。


「でも改めてデートを誘うってのは…」


「うーん。…そしたらさ、いい案あるんだけど!」


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