金色・銀色王子さま
聞き覚えのある声にゆっくり振り返ると、カイトと龍之介が立っている。


「仕事先の友達連れてこよーと思ったんだけど急に出勤になっちゃって。りゅうちゃん叩き起こして来てもらっちゃいました~♪」


「そ、そうなんだ…」

「へぇー… もしかして、二人とも麻衣のアパートのお隣さん?」
動揺する麻衣をよそに、香織は口に人差し指を当てて二人を見た。物色…かのような色気ある目で。


「あ、香織!こっちがカイトでこっちが片桐」
麻衣の紹介が不服だったのか、片桐は軽く麻衣の頭を小突いた。

「なんで俺は名字なんだよ」

「え、だって普段からそう呼んでるじゃん」

「前から思ってたけど上の名字で呼ばれるのあんまないんだよね。だからスゲー違和感」

「そ、そんなこと今言われましても…」

不穏な空気が流れそうになるのを一蹴したのは香織だった。
香織はためらうことなく、片桐の隣に来るとクシャっとした笑顔を作った。


「じゃあ、龍之介って呼ぶね!私は香織、本間香織です。よろしく」

慣れた自己紹介と全く人見知りない香織の対応はとても助かった。ホッとひと安心。



「で、今日はどこに行くの?」

「あ、えっとー…行き先はカイトに任せてあるんだけど」


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