金色・銀色王子さま
麻衣はごほっと一咳払うと、今出来る精一杯の笑顔を向けた。


「うそだよ、片桐。じょーだん」


“冗談”
片桐に言われるより先に、自分が先に言った。
いつも通り。チクリとショックを受ける前に。
じゃあ、と閉めようとするドアを押さえた片桐は、グイッと麻衣の体を引き寄せるとおでこに手を当てた。


「っ!!か、片桐っ…」

「………何が大丈夫だよ、熱あるじゃん」


おでこに当てられた、少しだけひんやりした手が気持ちいい。なのにその手がゆっくり頬に触れたとき、燃えるように顔が熱くなる。
少しだけ屈んでくれて、目線の高さを合わせてくれる。



「顔だって真っ赤…仕事は?」

「や…休みに…した…」
あまりにも真っ直ぐ見つめられて、たどたどしくも素直に答えると片桐はそっと手を離した。


「デートの次の日風邪引くなんてむちゃくちゃだな」

「だってっ雨に打たれて…」


声を張り上げたら、それと同時に鳴るお腹。
マンガみたいなタイミングの惨事は、一瞬、二人の時を止めたけどフッと吹き出した片桐の声で時が動いて恥ずかしさが襲ってきた。


「昨日の夜から食べてないからっ…仕方ないでしょ」

「ふっ…はいはい」



ふくれる麻衣に、片桐は買い物袋の中身を見せてくれた。


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