金色・銀色王子さま
不破カイトが引っ込んだあとは、シーンとした。
"龍ちゃん"と呼ばれた金髪男は鍵を取り出すとそそくさと201号室の鍵を開けた。

「あっ!ちょっ、ちょっと待って!」
そう言ってダッシュで部屋に駆け込み、もう1つの菓子折りを手に持ち金髪男に突きつけるように渡した。

「202号室に越してきた藤井です、藤井麻衣。これ、どうぞ」

「あっ、どうも」
そう言って菓子折りを受けとるとのそのそ中に入っていった。
笑顔で対応したけど、"アンコウ"の恨みは忘れていない。こちらが内心ムッとしてるのも全く気にしてない素振りに金髪男の性根の悪さを感じた。


「……片桐…」
金髪男の部屋にはそうローマ字で表記されている。


こうして、2階の住人全てに挨拶し終わった。
何だか変に疲れた日だった。
楽しみにしていたインテリアコーデも手が付けられず、明日以降にしようと心に決めた。

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