愛し*愛しの旦那サマ。


「……」


シュンシュンと鼻を啜るような音が聞こえてくる。

今度は何だ……と、思い、彼女を見ると、さっきまでの表情とは違い、ぎゅっと口を結んで今にも泣き出しそうな表情の彼女―…

夢でも見てるんだろうか。

酔っ払ったり、寝惚け笑いを浮かべたりしたかと思うと、今度はこの表情。

せわしい女だな、そう思いながら、そのまま彼女に目線を向けていると、


「ジョージのばか……」


彼女の口から微かに零れた言葉。

そして、その言葉を零した後、微かに口を開けたまま、彼女は静かに寝息を立て始めた。

何だ、寝たのか、

と、思うと同時に目に入るのは、彼女の頬に伝う涙の跡。




そして、それから三十分後―…

まだ瞼を閉じたままの彼女をいい加減起こそうと、とりあえず声を掛けようと思った瞬間、


「……」


彼女が薄っすらと目を開ける。

それから、


「……!」


いきなり飛び起きたかと思うと、今度はキョロキョロと辺りを見渡し、何やら混乱している様子。


そして、俺と視線が合う。

唖然とした表情の彼女。



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