たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
プロローグ
グスッ、グスッ――


誰かが泣いている気配がその場には漂っている。だが、人の背丈ほどもあるようなバラのアーチが邪魔をして、姿をみつけることはできない。それでも、間違いなく泣いている誰かがいる。


グスッ、グスッ――


感情を押し殺すことがそろそろ限界に達しているのだろう。しゃくりあげるような声も混じり始めている。

その時、フワリと風が動く。そこに運ばれるのは、バラの甘い香り。それと同時にアーチが揺らされ、泣いていた人物の影が露わになる。

そこにいたのは、まだ幼い少女。だが、彼女が着ているものは幼い少女には不似合いにもみえる黒いワンピース。そして、髪につけられているリボンも黒い。彼女は、葬儀の場にいたのだろう。そして、それを裏付けるかのように彼女は目を真っ赤に泣き腫らしている。



「ぱぱ……まま……どうして、いなくなったの?」



少女はグスグスと鼻を鳴らしながら地面にうずくまっている。そんな中、ポケットから取り出されているハンカチも黒い。それを目に押し当て、チーンと鼻をかみながら、彼女は泣くことを止めようとはしていない。



「ぱぱ……まま……」



少女には受け入れることのできない現実。だからこそ、彼女は人にみつからないような場所で泣いている。フワリと動いた風がバラの花びらを散らし、少女の肩に舞い落ちる。そのことにも気がついていないのか、少女は嗚咽の声を押し殺している。

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