たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
しかし、これが無駄な努力だというのもいつものこと。その証拠に、今回も方策が見つかる前に、部屋の扉を叩く音が響いていた。



「お嬢様、お目覚めでしょうか?」



穏やかな男性の声が聞こえたかと思うと、部屋の扉がガチャリと開く。そのことに慌てたような表情を浮かべた亜紀は、思わずベッドから飛び出そうとしていた。



「お嬢様、まだお時間はあります。朝のお茶をどうぞ」



そう言いながら差し出される紅茶は香りが高く、眠気を飛ばしてくれそうな気がする。とはいえ、今の自分の姿がどんなものか分かっている亜紀は顔を赤くすることしかできない。そんな彼女の反応が不思議なのか、入ってきた相手は軽く首を傾げていた。



「いつも言っておりますが、私のことはお気になさらないように。お嬢様がどのようなお姿でいらっしゃろうとも、取り乱したりなどいたしませんから」


「そ、そんなこと言われても、私が気になるの。お願いだから、着替えるまで入ってこないでよ」



亜紀の言葉に、部屋に入ってきた相手は困惑の色しか浮かべようとはしない。たしかに、一般常識で考えれば寝起きの女性の部屋、それもまだパジャマのままでいるところに入るのは不躾でしかない。だが、この相手―竹原雅弥(タケハラマサヤ)―が着ているのは執事服と呼ばれる物。

つまり、彼にとっては仕えるべき相手の世話をするために入っている。そのことを咎められるはずがないではないか、と言いたげな表情。しかし、亜紀にとってこれは常識とはかけ離れた非常識でしかない。



「私の言うことをきいてくれるんでしょう? だったら、これはちゃんと守ってちょうだい」

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