たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
そんな中、女子高生のお小遣いでもちょっと頑張れば手が出せそうな価格設定の店もある。『ファエロア』というそのブランド、お財布に優しいだけでなく、デザインも秀逸。そんなブランドに憧れない女子高生がいるはずもない。

亜紀も由紀子も中学を卒業したら、一度は行こうと約束していた店。そこが目の前にある。この事実に、二人はポカンと口を開けることしかできないようだった。

そんな彼女たちの様子を不思議に思ったのだろう。惟が首を傾げながら亜紀の顔を覗きこむ。



「亜紀ちゃん、どうかしたの?」


「べ、別に何もないです……それより、案内してくれる場所ってどこですか?」


「分からない? ここだけど?」



そう言いながら惟が指差したのは、ファエロアの店先。この事実に亜紀はまた何も言うことができなくなっている。そのまま信じられないというように由紀子と互いに頬を抓り合う姿を見た惟はクスリと笑うと彼女に腕を差し出している。



「お姫様、こちらにどうぞ」



そう言うなり、彼は亜紀と腕を絡ませると店内へと導いている。さすがにこれは気恥かしい。そう思った亜紀だが、惟の腕を振り払うことができず、そのまま歩きだすしかない。そんな二人の姿を見た由紀子は頬を紅潮させ、目をキラキラとさせている。

間違いなく、今の彼女は憧れのブランドに来たことと、惟の行動に興奮している。そのことを感じた亜紀は、うなだれることしかできない。そんな見事な温度差のある三人が店内に入ったとたん、明るい女性の声がかけられていた。

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