最後の夏休み Last Summer Days.
「そっか。じゃあ今日はご飯作ってあげるから帰ろうな」



そう言って頭をなでる小説家。



うなずきながら、アタシは泣き出した。



「いっぱい泣きな」



乾くことのない涙がしょっぱくて、



ぐしゃぐしゃの顔を隠したくて、



下を向いていた。



小説家はそんなアタシと手をつないで、石の階段をゆっくりと登っていった。



その日だったね。



ソラが部屋からいなくなったのは。



ベランダにも、



お気に入りの大きな木の上にも、



どこにもいなかった。




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