オフィスの甘い獣(ケダモノ)
「豆腐、グツグツしてるやん。もう~食べれるで」



淡い黄色の友禅染姿の都さん。

袖と裾には菊の花々が大輪の花を咲かせている。



ヘルシーなメニューで肉食の俺には物足りないが、たまには身体に優しい食材もいいかもしれない。


薄味の豆腐も雰囲気だけで美味いと感じ、酒も進んだ。


振袖姿の都さんが俺のお猪口に徳利の酒を注ぐ。


「おもてなしもしないとあかんやろ?」


「…最高のおもてなしだな。すげぇ~プレッシャー感じる」



「…あたしだって…お母さんの期待に応えな…あかんし…必死やねん」



「それは見てたら判る…」



俺も『オリオン』の副社長として…義父さんの期待に。



考えてみると、俺と都さんは境遇がそっくりだった。






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