オフィスの甘い獣(ケダモノ)
「…細谷…ちょっと」




副社長が私に近づいて来た。


「緊急事態だ…」


「えっ!?」



「だから…早く来て…」



副社長は私を南さんたちから引き離した。



そして人気のない広間の隅に誘い込む。




「…緊急事態って何ですか?」



「…あ…これ」




副社長は慌てる私に涼しげな笑みを見せてカードキーを差し出す。




「…君の方が多分…俺よりも先にスイートに行けると思うから…カードキー…君に預けておく」



「…あ…はい」



彼は私のドレスの白いボレロに触れる。



「ファーは触り心地…気持ちいいね」



「…私もファー好きなんです」



「…先にちゃんとシャワーは済ませておいてね」


「副社長!!?」


「じゃあ~」



彼は後ろ手にしてヒラヒラさせながら接待に戻っていった。





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