オフィスの甘い獣(ケダモノ)
会社は自社ビルで私が勤務する場所は最上階。
最上階のフロアの間取りは開放感溢れるワンフロア。
社長室、秘書室、応接室と硝子でそれぞれ仕切られ、縦型のブラインドで中が隠せる仕組みになっている。


独立した空間は確保されるようになっていた。



私はブラインドのルーバーを閉じたまま…神宮寺社長に朝のコーヒーをお出しする。

「ありがとう…一昨日はどうだった?」





神宮寺社長の第一声は千寿子の結婚の話だった。


私と千寿子は共に社長秘書。



「え、あ…宮森さんの花嫁姿は素敵でしたよ」



「そうか…私も見たかったな…」



「あの…社長…これ…」



私は隠し持っていた退職届をそっと差し出した。




「やっぱり…辞めるのか…」


< 18 / 318 >

この作品をシェア

pagetop