御劔 光の風3
ナータックは寂しそうに表情を曇らせると短く首を横に振る。

「本当のことを申しますと…エプレットはサルスパペルト殿下の側近になるようにと育てています。」

その言葉にハワードは目を大きく開き驚きを素直に表現した。

目の前で苦笑いするナータックもまた自分と同じように感じている、そう悟ったのだ。

カルサと変わらないハワードからしてみればまだまだ青い年頃だが、自分が懸念していることを彼も思い先んじて手を打とうとしている。

その姿勢に少なからずハワードの心は揺れた。

そしてナータックはハワードも同じことを考えていると悟った上で申し出ていることにも気付いたのだ。

「知っているのか。」

「いえ。思っているだけです。ですが…彼にも少なからず私の思うところは伝えてあります。」

言い回しにも感じるところがありハワードは納得の声を出して口を閉ざした。

自分だけでなく動いている者はいる、それが分かっただけでも新たな希望が見いだせたようで嬉しかったのだ。

大袈裟かもしれないが後継者が現れたような気がして肩の力が抜けた。

自分が思うより人は育っているのだと知れたことは大きい。

「覚えておこう。」

その言葉を声にした時、喜びを表し微笑んでいたのを自分でも気が付いていた。

ナータックの満面の笑みがそれを教えてくれたのだ。

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