御劔 光の風3
カルサは手で口を覆い激しく波打つ感情を押さえようとしていた。何故こんな時にそれが出てくるのだろう。

落ち着く間も与えず翻弄ばかりされていい加減おかしくなりそうだった。

彼女は言っていた。太古の因縁も、自分の力の源も何も知らないと。今ある知識は全て祖母と慕った風蝶の婆に教わったものだと。そう言っていたのに。

「リュナの体の中には魔性の血が流れている。 マチェリラ、リュナを見たならハッキリと分かったんじゃないのか?」

カルサの言葉にマチェリラは肯定の声をあげ頷いた。

「彼女は魔性の血を持っている。残念だけどそれはハッキリ言えるわ。」

次々と明かされていくリュナの秘密、薄い幕で覆われた彼女は捲っても捲っても真実の姿を見せなかった。

まるで無数の布に包まれた奥深くで嘲笑っているかのようにも感じる。

そうでないと信じたいのに弱くなる心が奮い立たせてはくれない。

「何がどうなってるんだ。リュナが古の民で魔物?」

困惑しすぎて貴未は頭を抱えた。

目に浮かぶのは愛らしい笑顔のリュナ、今まで共に過ごした日々からはこんな大がかりな嘘をつくような人とは思えない。

誰もが揺れる気持ちでリュナを探る、しかし千羅は一歩引いた位置から眺めてそれをたしなめた。

「リュナが知らなくてもレプリカが知っている可能性がある。」

千羅の言葉にマチェリラはすぐに反応する。

「彼女も古の民、でも人間だったわ。」

カルサは顔を上げて見渡すかぎりの景色を目に焼き付けた。

そして空を仰ぐ。

まだ魔物の群れが城に着くには時間がある、カルサは右手を高く挙げ目を閉じて力を放出し始めた。

身体からにじみ出る光の波はカルサの力そのものの表れだ。

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