御劔 光の風3
当時国を治めていたのはカルサの祖父母にあたる人物で、特に祖母である后は所謂、特殊能力を持つカルサに近しい人物だったのだ。

従兄妹同士の結婚ということもあり、ごく内輪で出来た王族は他国からの厳しい風当たりもあった時期だったのを覚えている。それ故に城内は殺伐として雰囲気もあり、一時期は反乱さえも起こるのではないのかと噂されたほどたった。

それでも国王や家臣たちの働きによって少しずつ隣国との関係は改善されていったが、やはり国王夫婦への目は厳しいものが続いていたのだ。そんな時にナルとハワードは城に入った。

貴族出身のハワードは習わしによって下級の兵士からその地位を築くべく懸命に働いている、ナルも中流階級の家から女官として勤めるようになったのだ。

「すみません、手を貸してもらえますか。」

非番の日に城下を歩いていたナルに声をかけたのは困り切った顔をしていたハワードだった。彼の傍らには泣きじゃくっている子供が俯いている。

「迷子の様ですが、男だと駄目みたいで。」

「あら。どうしたの?」

状況を察知したナルはすぐさま子供に駆け寄り視線を合わせて優しい声で語りかけた。なんとか名前を聞き出している間にハワードが周りに親がいないかを確認する。

遠くから子供の名前を叫ぶ声が聞こえ、その子の名前だと分かると二人は子供を抱えて走り出した。

「お母さん、ここですよ!」

ハワードが声を張り上げて大きく手を振る。子供を抱えたナルの背中を支えながら母親との距離を縮めていった。そして無事に親子は出会い、二人は笑顔で見送ったのだ。

「ありがとうございました。私一人ではどうしたものかと思いまして。」

親子の姿が見えなくなった後でハワードが恥ずかしそうに頭を掻きながら話す。その姿が可愛らしく思えナルは可笑しそうに首を横に振った。

「いいえ。お役に立てて良かった。ハワード様、ですね。」

「私をご存じで?」

「はい。女官の間では有名な方です。とても素敵な方だと皆噂していますから。」

「それを言うなら貴女もですよ、ナル殿。愛らしい方が入ったと男共は浮ついています。」

「えっ?」

姿を見かけても言葉を交わしたことが無かったが、互いに存在を知っていた。その事実を知り二人は楽しそうに笑いあって会話を弾ませる。それが二人の始まりだった。

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