御劔 光の風3
「千羅に頼まれた。表だっての警護が必要なんだって。」

カルサは自分を指差した。貴未は頷き、お前の警護だと笑う。

「当たり前じゃん。カルサ以外に誰がいるんだよ。」

「…あいつはお父さんか。」

「似たような気持ちであることは間違いないね。」

千羅の行動に呆れながらもカルサの表情は穏やかだった。そしてもう一度天井を仰ぐ。貴未もそれに続いて顔を上げた。

「サルスは武器庫にいるらしい。」

「武器庫、ね。」

二人の声が賑やかな室内に消えていく。

武器庫、それは城の中でも異質な場所だった。

ひんやりとした石畳の造り、あまり人の出入りがないことから靴音はやけに響く。それでもそれなりの広さを確保されているのは今までの戦いの歴史を感じさせるものでもあった。

「殿下。」

武器庫の番人がサルスに気付いて敬礼で迎える。サルスは数人の兵士を連れ武器庫の中を歩いていった。

きれいに整頓された長剣の一つを手にして眺める。丁寧に手入れされたものだがサルスの表情は厳しかった。

「鍛冶師に手入れをさせてくれ。もう少し鋭く、魔物でも楽に斬れるようにと。」

「はっ。」

兵士は返事をし、手に持っていた帳票に印を付けサルスの言葉を書き込んでいく。

「薬師には猛毒を用意させろ。兵士全員に行き渡る量を急ぎ準備するように。」

「はっ。」

もう一人の兵士は返事をし、すぐに薬師の下へ走っていった。兵士が倉庫を出てすぐにカルサとすれ違う。カルサと貴未は一礼をした後に走り去った兵士を見送りながら武器庫に足を踏み入れた。

奥の方でサルスが武器を吟味しているのが見える。

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