御劔 光の風3
「マチェリラ。」

「私は何が理由だとしても絶対に許さない。この手で八つ裂きにしてやりたいくらい心はいつでも悲鳴をあげてるわ。出来るなら今すぐにでもやれる位にね!」

当然のように沸いてきた憎しみの感情がたちまちマチェリラの心を支配していくのが分かる。

受けてきた仕打ち、耐え難い苦悩、取り戻せない全てが負の感情となって渦巻いていくのだ。

誰が何と言おうとも関係ない。

この身に起きた出来事の重さは自分自身にしか分からないもどかしいものだと分かっていた。

解消する術は一つしかない。

後にやってくる感情の種類が何か分かっていても、爆発しているこの気持ちは止められないのだ。

「何がこの戦いを終わらせるのか分からないけど…でも玲蘭華が無事でいる未来なんて一つの可能性も無いのよ。少なくとも私が生きているのならこの手で何かを下してやるわ。」

「どうしても?」

「愚問ね。」

即答したマチェリラに感情的なものはない。

思いを吐き出しながら冷静になれた今でも狙うことはそれしかないということだ。

当然だとされてしまった位置づけにはもう動かせる材料はないのだと思い知らされるだけだった。

「マチェリラの感情の矛先は玲蘭華だけ?」

「そうよ。私の中にヴィアルアイはいない。」

「永はヴィアルアイに攫われているのよ?」

「全ての元凶は玲蘭華、それ以外に何があるの?今でさえも私たちは玲蘭華の歯車として生き続けるのに。」

思い込みではなく、それは確かな事実。

マチェリラの気持ちも分かるだけに何とも言えないもどかしさが圭の言葉を奪っていく。

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