君の『好き』【完】




体育館に入ると、


少し離れたところで、


首にかけたタオルで顔の汗を拭いている吉井くんと目が合ってしまい、

思わず沙希の後ろに隠れた。




「鈴、なにやってんの。


ちゃんと見なよ。


これじゃ、私が吉井くんのファンみたいじゃん」




沙希が後ろを振り向いて、腕を引っ張った。






「や、やっぱ無理!私、ほんと無理!


もう、ドキドキしすぎてやばい!」



沙希から腕を引っ張り返して、


体育館から出て、渡り廊下を校舎の方へと歩き出した。



「すずー!こらー!」





沙希に呼ばれても、「無理!」と言ってそのまま歩いた。






「鈴!!」






えっ。





これは沙希の声じゃない。



渡り廊下の途中で立ち止まって、


その声の方へ振り向くと、




目の前に、首からタオルをかけた吉井くんが立っていた。






吉井くんは少し息を切らしていて、



ふわふわとした黒髪は、教室で見るよりも、


もっと、くしゃくしゃっとはねていて、


毛先が汗で濡れてキラキラと光っていた。





「じゃあね、鈴」



小さな声で目で合図しながら、


沙希が私たちの横を通り過ぎて行った。




渡り廊下に二人



体育館からの掛け声



ボールの弾む音





緊 張 する.......
















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