君の『好き』【完】





膝の上のお弁当を持ってそう言うと、


海くんは小さく首を振った。




「そんなのはいいから、早く食べな」





海くんはまたおにぎりを食べた。



なんか、海くんといるとホッとする......そんな気がした。







あまり食欲がなくて、少しだけ食べて蓋をすると、


弁当箱をリュックにしまった。




「教室に戻れそう?」



海くんに言われて、体育館の時計を見つめた。


まだ5時間目、あと6時間目もある。




それに、教室に戻ったら、隣の席に吉井くんがいる。





私は俯いてしまった。




「帰ろうか」




えっ......

海くんはリュックを背負った。





「だって、海くん6時間目は?それに部活は?」





海くんは立ち上がった。




「6時間目はさぼる。部活は......今日は休み。


よし、帰ろう!」




ははっと笑って私のリュックを持ち上げた。





「その代わり、明日からちゃんと教室行こうな。


辛いかもしれないけど、


避けるのは、よくない。




大丈夫だよ、時間が解決してくれる。





とにかく、今日は帰ってゆっくり休みな」







時間が、解決してくれる......








「うん.......」






ゆっくり立ち上がると、海くんからリュックを受け取って、


背中に背負い、海くんと歩き出した。






一緒に学校を出て、一緒に帰った。




海くんは少し黙っては、突然関係ない話をして、



なんだかそれがおかしくて、




笑ってしまった。




海くんは隣からずっとにこにこ笑っていて、



その笑顔を見ていたら、なんだか癒されて......






私の家の前に着くと、



ニコニコ笑っていた海くんが突然真剣な顔になって、


私の顔を覗き込んできた。
























< 89 / 205 >

この作品をシェア

pagetop