ツンデレくんをくれ!
「これからすげーめんどくなりそう……」

「うん、あたしも同情するわ」


中出、いかにもめんどくさいこと嫌いそうだし。


今もそんな未来を思っているのであろう。言ってる傍からため息ついてるし。


「飯田さんはどう思うけ?」

「あたし? ……まあ、今まで以上にしつこくなりそうだね。会ったことないから知らないけど」


それよりもあたしは佐々木さんが羨ましくてたまらないよ。


部活じゃ絶対見れない中出も見ているんだろうな。


あっちは部活の中出を見れてないけど、プライベートの中出を見れるとかほんと贅沢だぞ。


「うん……だから、彼女作ったら諦めてくれるかなって」

「は?」

「これが収まるまで……飯田さんに、彼女の代わりやってほしい……です」

「…………んーと、」


これはどう答えればいいのかな。


や、中出に頼まれてるから、応えてやりたいのはやまやまなんだけどさ、そもそも昨日までのあたしからしたら、こうやって普通に話せてるのも奇跡なくらいですから。喜んで引き受けたいところなんだけど。


「一つ、確認しとこうか」

「ん」

「中出がその子と付き合う選択肢ってのは」

「ない」


ああ、即答された佐々木さんに深く同情する。


いくらなんでもかわいそう過ぎる。あたしだったら三ヶ月は立ち直れない。


「なんでそんなにその子が嫌なの?」

「……俺のタイプやない」


そうか、君にも女の子の好みというものがあったか。


「ていうか、その人、ギャルっぽくって」

「今時ギャルの大学生なんているんだ……」


ていうか、奈子さんは君がギャルという単語を知っていることに驚いたよ。


「中出には受け付けられないんだ」


中出はあたしの問い掛けに黙って頷いた。


まあ、そりゃそうか。中出自身が大人しいから、あまりうるさい人は中出の手に負えないと思う。


なんとなく嬉しくなっている自分がいた。


人の不幸を喜ぶとか、あたしも悪い人間だよなあ。


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