凪とスウェル
それから30分くらい経っただろうか?


ガチャンと扉が開き、ちょこんと顔を出す男の子がひとり。


「あー、田村ー。来たのねー」


友子が手を振る。


「おう」


ぶっきらぼうにそう言うと、田村が部屋に入って来た。


チラリあたしを見ると、田村は無言であたしの隣にそっと腰掛けた。


「この部屋、何時間とってんの?」


田村の質問に、マキがフリータイムよと答えた。


一通りマキと友子と会話をした田村は、視線をゆっくりあたしに移した。


「よう」


「ども」


「久しぶりだな」


「うん…」


ぎこちない挨拶。


別れて以来、電話もメールもしてなかったんだから、当然と言えば当然だ。


「ビックリした、髪。

真っ黒になってんだもん。

でも、結構似合ってんじゃん」


そう言って優しく笑う田村の、根元まで綺麗に染められたブラウンヘアがふわりと揺れる。


無造作で、なおかつオシャレなヘアスタイル。


着ているジャケットも、キメ過ぎてなくて、さりげなくバランスが良い。


今の高校じゃ絶対見られない洗練した男子の姿に、なんだか少し胸がドキドキした。

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