凪とスウェル
隆治の頬が涙で濡れていたので、あたしはポケットからハンカチを取り出して、隆治の頬をそっと拭いた。


隆治は床に視線を落として、じっと一点を見つめている。


目を真っ赤にした隆治を見ていると、胸がぎゅっと締め付けられてしまう。


隆治って、他の同級生の男子に比べると、どこか大人びてるなってずっと思ってた。


酒屋の仕事を手伝っているからかな?って思っていたけど、多分そうじゃなくて。


隆治には、甘えたい時に甘えられる相手がいないんだ…。


おじいちゃんがいるにはいるけど、携帯を買ってとも言えない隆治。


だから、早く大人にならなくちゃって、そう思っていたのかもしれない。


一人で初日の出や、岬の夕日を見ていた隆治。


ずっと孤独で。


ずっとずっと、寂しかったんだ…。
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