凪とスウェル
舵を取るのは苦手なようで
次の日の水曜日は、朝から授業がなかったから、千春ちゃんと会うことはなくてホッとしていた。


だけど木曜日になると、千春ちゃんは案の定、いつものベンチであたしを待っていて。


その手には、パン屋の袋が抱えられていた。


「おはよう、すずちゃん。体調はどう?」


「うん。もうすっかり大丈夫。

途中で帰ったりして、本当にごめんね」


「そんなの気にしないで。体調が一番大事だよ」


千春ちゃんって、本当に優しいよね。


「あ、これ、今日のパン」


そう言って、千春ちゃんがパンを手渡してくれる。


「ね、ねぇ。千春ちゃん。この朝のパンのことなんだけど…」


「え?パンがどうかしたの?」


きょとんとする千春ちゃん。


あたしは一度深呼吸すると、真っ直ぐに千春ちゃんを見つめた。


「あのね。あたしのお父さんが、やっぱり朝ごはんはきちんと食べたいって急に言い出して。

あたし、これからは早起きして、毎日朝ごはんを作ることになったの。

せっかくだしね、あたしも一緒に食べようと思って。

だから、これからは…」
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