凪とスウェル
「隆治(りゅうじ)、来とったんねぇ」


今頃になって、おばあちゃんが奥の台所から出て来た。


「こんちはー」


やたら愛想の良い八神。


「ご苦労さんじゃったねぇ。

ちょっとそこへ座って待っときんさい。

お茶入れてあげるけぇ」


「あざーっす」


おばあちゃんに言われて、八神は縁側に遠慮もなく腰掛けた。


えー、何?この状態。


おばあちゃん、リュウジって呼び捨てだったけど。


おばあちゃんと八神って、知り合いなわけ?


さ、さすが島。


世間が狭い。


しばらくすると、おばあちゃんが丸いお盆に麦茶とおしぼりを載せて和室に入って来た。


八神の前にそっとお盆を置くおばあちゃん。


八神は慣れた様子でおしぼりを手にし、あっという間に麦茶を飲み干してしまう。


「梨も切ったけぇ、食べんさい」


「いただきまーす」


八神はそれをおいしそうに食べている。


うーん、なんだか異様な光景…。


「すず。あんたと隆治、同じ高校なんよ。会うたことある?」


「へっ?」


急に話を振られて、ビクッと肩が上がった。


「キヨさん。俺ら同じクラスだよ」


「あら、そうなん?そりゃ良かったねぇ」


な、何が良かったんだ!


「東京から来て島に友達もおらんのんよ。隆治、仲良うしてやってぇね」


にっこり笑うおばあちゃんに、八神は笑顔で返した。
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