凪とスウェル
隆治の思い
カンカンと、隙間の多い階段を上っていく。


このアパートって、新築ではないような気がする。


住宅地の中にひっそりと建っていて、駅からのアクセスも悪そうだし、そんなに広くもなさそうだ。


そんなことを思っていたら、あっと言う間に隆治の部屋の前に到着してしまった。


電気がついているのかいないのか、玄関側からはわからないようになっている。


あたしはドキドキしながら、インターホンを押した。


インターホン越しに会話出来るようになっているので、そこに耳を傾けていた。


するとガチャンと音がし、意外や意外、すぐにドアが開いてしまった。


そこから顔を出す隆治。


視線が絡み合い、一気に頬に熱が帯びた。


「すず…。どうしてここが…?」


目を見開く隆治に、あたしはゴクンと息を飲んだ。


「右京君に聞いたの」


「右京に?え、どうして?」


隆治が戸惑うのも当然だよね。


「あの、これ…」


そう言って、隆治の携帯をそっと差し出した。


「忘れ物を、届けに来たの…」
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