凪とスウェル
きっとどんな伝え方をしても
リクライニングベッドを起こし、星など見えない夜空をただ眺める。


あたしは既に一般病棟に移っていて、二人部屋に入っていた。


隣のベッドに居た人は今日退院になり、一人でこの病室にいるせいか、やたらと静かだ。


昔は大変だったこの病気の手術も、今は医療の進歩で随分身体への負担が減ったと聞いた。


手術の跡もほとんど残らないらしいし、良い薬もあるそうで、本当に良かったと思う。


ついさっき、右京君とサエちゃんが仕事帰りにお見舞いに来てくれた。


しばらく病室に居てくれたけれど、お腹が空いたからと言って、近所のファミレスに夕飯を食べに行った。


そろそろ戻って来る頃かな?


そんなことを思っていたら、病室のドアが開いた。


カーテンを少し閉めているので、誰が来たのかこちらからではわからない。


右京君達かな?と思い待っていると、カーテンの横から顔を出す男性がひとり。


それは、なんと隆治だった。


「すず…」


今にも泣きそうな顔の隆治。


その顔をただじっと見つめていたら、隆治はつかつかとあたしのそばに来て。


ぎゅっとあたしを抱きしめた。
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