凪とスウェル
思いがけない行動にビックリして、慌てて唇を離そうとしたけど。


隆治はあたしの頬に置いていた手を、片方素早くあたしの後頭部に回して、逃げられないようにしっかりと固定した。


ここ病院なのに。


もうすぐ右京君達が戻って来ちゃうのに。


そう思ったけど…。


高3の夏以来のキスに、胸がときめくのも確かで。


いけないと思いつつ、あたしは隆治のキスを受け入れてしまった。


キスを交わしながら、隆治のもう片方の手が、頬からゆっくりあたしの手へとなぞるように移動し。


互いの指を強く絡ませ合った。


何度も何度も角度を変えて、次第に熱く深いキスになっていく。


「りゅ…、ん…」


病室に響き渡るリップ音。


時折漏れる隆治の熱い息。


なんだか何も考えられなくなって、気がつけばあたしと隆治は情熱的なキスの感触に酔いしれ、夢中で味わっていた。


その時だった。


バサッと何かが床に落ちる音がした。


ハッと我に返り、慌てて唇を離す。


指を絡め合ったまま、隆治と二人でその音がした方向を見ると、そこには…。


驚愕の表情を浮かべた、千春ちゃんが立っていた。
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