凪とスウェル
「隆治にはこれまで何度も電話して来たけど、全然出てくれなかったよね。

たまには帰っておいでって、そう伝えたかったのよ。

家がイヤなら外でもいいから、ずっと会いたかったわ。

何か必要なものがあれば、いつでも買って持って行きたかったし。

今日、電話に出てくれて、本当に嬉しかったのよ。

隆治におかゆを作れて、久しぶりに母親らしいことが出来て。

すごく、すごく嬉しかった…」


母親の目には、涙が溜まっていた。


全然知らなかった。


母親が俺をそんなふうに思っていたなんて。


「あなたの不器用なところは、私に似たのかもしれないわね」


「不器用って?」


「本音が言えないところよ。

肝心なことが、何も言えないの。

人に甘えるのも、頼るのも苦手だし、一人で抱え込んでしまう。

本当は苦しいのにね。

そして気がつけば、取り返しのつかない地点に来ていたりする…」


思わずフッと鼻から息を吐いた。


そう言われたらそうかもしれない。


変なところが似たものだな。


情けなくて、なんだか泣きたくなった。
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