凪とスウェル
「隆治は、本当にその女の子のことが好きなのね…。

その子のそばにいることが、隆治の一番の幸せなのね?」


俺は、うんと頷いた。


「そっか…」


母親は何か考えているようだ。


「まぁとにかく。

まずはその風邪を治さないとね。

明日は仕事を休みなさいね」


「だから、それは無理だって」


「大丈夫よ。私が話をしてあげるから」


「へっ?」


意外なことを言う母親に、目がテンになった。


「今からお店に行ってくるわ。

ここからなら、そう遠くはないわね」


「えっ、ちょっ、でも。

もう時間も遅いし」


「パン屋って朝が早いんでしょう?

今話さないと、明日の朝話したんじゃ遅いと思うわ。

ご主人は今いらっしゃらないのよね?

奥様には、私から話すから」


いやいや、ちょっと待て。


それはマズイだろうと、慌てて止めようとしたけれど。


母親はコートを羽織り、あっという間に玄関を飛び出してしまった。


「えー…」


身体がつらいので起き上がる事も出来ず。


俺は布団の中で呆然としていた。
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