らすとうぃっしゅ
貴崎 秋斗

あの日から3日がたった、あれからあの楽譜を読み込み、
あの曲にはアンサーソングが存在することを知った私は、早速その楽譜を求めて
楽器屋に向かった。

店に入って奥の棚の一番上の段。

「あった…………っう」

この高さは、ギリギリ届かない。
踏み台を持ってきて取るのは、なんとも恥ずかしいが、致し方ない。

私は踏み台のある向かいの棚の前にしゃがんだ。
すると、誰かに肩をたたかれた。

「はい」

振り向くと、この前の彼、貴崎秋斗が立っていた。
その手には届かなかったあの楽譜。

「また……あり、がと」
「どういたしまして」

私は立ち上がり楽譜を受け取る。
「これ、ピアノ伴奏だね、僕これひけるよ」

「え?ピアノ、弾けるの?」
「うん、僕の生きがい」

それは素晴らしい。音楽が好きな人は好きだ。

「ねえ、これからお茶でもどうかなあ……向かいのカフェ、知り合いの店でさ、ピアノあるからその曲弾かせてよ」

私も聞きたいと思った。

「うん、お願い」

私はこんなに人に気を許す人間だったでしょうか。
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop