ワーキングガールズ・クリスマス
「よっしゃ!送信完了!」


エンターキーを押した瞬間、画面に了承サインが出て、私は喜びのあまりガッツポーズをとった。


と、共にどっと疲れが溢れてきて、椅子にも座らずキーボードを触っていた自分に気がついて、どさりと床に座り込む。


20:00。


壁にかけられた時計の時間だ。


それを見上げてああ間に合った、と私は溜め息を吐く。


……クリスマスイブ当日に接待などあり得ないだろう。


嫌らしい笑みを浮かべた、取引先の社長を思い出して吐き気がした。


確かに今日は平日、それも年末の追い込み時期だし。


そして私は営業マン、彼氏なし。


今日くらいは家族と、恋人と過ごしたいと願う営業課の面々は、わざわざ今日外回りには行かない。


終業時間、恋人のいる者は一目散に帰り、私のような独り者は集まって呑みに行く約束だった。


しかし昼過ぎ、急に取引先に呼び出されて営業するはめになったのだ。


しかも営業だなんて建て前で。


待ち合わせ場所はやけに高級なレストラン、ーこんなところでどうやって製品説明をせよという感じのーしかも待っていたのは社長であるハゲ親父ではなく。


『やあ柏木さん!
来てくれて嬉しいよ、座って!』


好きでもない、むしろ嫌いな部類の顔だけはいい息子がいたのだ。

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