ワーキングガールズ・クリスマス
娘さんが二人のはずです、ケラケラ笑ってそう告げたら千秋さんは見る間に真っ赤になってしまった。


あー可愛い。


4つも年上の彼がとってもキュートに見えて、あたしはニヤニヤする。


「……そんなに焦ったんですか?
あたしがとられるんじゃないかって」


上目遣いにからかうあたしを、じとっと睨んで彼は言う。


「弥生さんって意地悪ですか?」


うーん、可愛い、ほんと可愛い。


今までちいくんの世話をする、営業マンとして働くかっこいいパパの姿しか見てこなかったから、こんなに可愛いなんて一粒で二度美味しい気分だ。


でもあたしだって鬼じゃない。


彼のウルウルしたまあるい瞳(ちいくんはそっくりの目をしている)にはさすがに勝てない。


意地悪じゃない、いつもの女神(だって千秋さんが言うんだもん)のスマイルに変えてあたしは言った。


「プロポーズ、お受けします」


びっくりして声も出ない様子の彼。


でもあたしは言葉を紡ぐ。


「あたし、物心ついた頃には母親がいなくて、小学校上がるぐらいに父も亡くなってるんです」


千秋さんがハッとしたように息を呑んだのが分かった。


ーーちいくんと千秋さんが幸せそうで、見ていて羨ましかった。


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