やくたたずの恋
 結局、『ABCの歌』を十回ほど繰り返し歌っているうちに、雛子は自宅の前にたどり着いていた。
 大きな門の横に立つSPに挨拶をし、門を潜って家へと入る。祖父の代に建てられた、純和風の家屋。その玄関は、たくさんの来客に備えて、六畳ほどの広さがあった。
 そこに、父や父の秘書たちのものとは思えない、男性ものの大きな靴があった。
 誰か、いらっしゃってるのかな?
 不思議そうに靴を見る雛子に、出迎えたお手伝いさんが声を掛ける。
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