やくたたずの恋
23.これが、恋?(前編)
「いらっしゃい」
 3日前と同じように、志帆が門を開けながら微笑む。
 雛子も負けじと笑い返すが、子供が描いたアンパンマンのような顔になってしまっていた。来たくなかった、という気持ちが、どうしても顔に出てしまう。
 初めてここに訪れてから3日後のこの日、雛子は再び志帆の家を訪れていた。
「今日も来てくれた、ってことは、夫を誘惑してくれる気になってくれたのかしら?」
「い、いえ。それはちょっとアレなんですけど……」
 雛子は志帆の後について、廊下を歩く。誘惑なんてできるはずもない。だが、仕事は仕事だ。星野と話をすることぐらいはしておかないと。
 気を引き締めて、雛子は星野の部屋をノックし、中へと入っていく。
< 275 / 464 >

この作品をシェア

pagetop