ラヴィ~四神神葬~

5節

 ふわりと栗色の髪が揺れた。
 薄い陽光が廃屋に差し込んだ。
 ・・・霧が晴れていく。

「雅樹・・・」

 総司は噛み締めた。
 少年―新田雅樹の琥珀の双眼が、総司を見据えている。

「ささやかな報復だ。お前のやっていることは、俺への裏切り行為だろう」
 静かな口調。
 しかし雅樹の目は怒りで満ち満ちている。

「『あいつ』はお前の傍にいた。なのに、どうして何も言わなかった?」
「《彼》が目醒めたのは、ごく最近だ」
「だから気付かなかったとでも言い訳する気か。お前ほどの《力》を持つ者が分からないわけない。・・・百歩譲って、そうだとしても報告が遅すぎる」
「薔薇の花束は、お前だったんだな」
「探し続けてようやく出逢えたんだ。当然の挨拶だろう」

 雅樹は何もかも気付いている。
(だが、情報源(ソース)はどこだ?)
 《彼》と雅樹の間に接点はない。

 ―しかし雅樹は、今泉卓也の存在を知っている。

 不意に静寂を解いたのは、陽光に照らされた赤い宝石だった。前触れもなく、雅樹が赤瑪瑙(メノウ)を床に叩き付ける。

「これは・・・!」
 床一面に散乱した、血色の破片。
 雅樹の行為の意味を総司は理解する。
「覇妖の煽動も俺がやったと考えているわけではないだろう」
 床にくっきり染みついた、痣(あざ)のような痕(あと)。
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