ラヴィ~四神神葬~
 両腕の気流装甲を真が一旦解除した。
 天に立ち上る柱に変化した気流に、卓也の姿は隠される。

「詰めが甘いよ。オレに気流弾を乱射させて、気流の柱をゼロにさせる作戦だったんだろうけど。お前が最優先で卓也の救出を考えていることくらい、最初から分かっている。ならば、オレはお前を攻撃せずに・・・」
 右の手が指し示した先は、竜巻の監獄だ。

「全ての攻撃を卓也に集中する」

 総司が《雪》を使えば、《雪》もろとも気流の兇器が卓也を襲う。
「このまま為す術もなく、タイムリミットが訪れるのを待つか。それとも、自らの手で卓也を葬るか・・・さぁ、選べよ」

「・・・まだだ」

 低く刻んだ声に、ピクリと真の眉が揺れた。

(勝機は必ずある)
 一瞬を総司は見逃さない。真めがけて総司が走る。
「接近戦でオレの隙を突く気か。だがオレの気流は万能だ。どんな体勢で撃とうとも、お前の《雪》を卓也に跳ね返す」
「そこが盲点だ」
 突き上げた拳がうなる。
 金髪が宙に踊った。
 紙一重で、総司の拳は宙を切る。
 しかし不測の攻撃で真は完全に対応が遅れている。左の拳が真をとらえた。
(真は俺が《雪》を使うと思い込んでいる)
 だったら俺は逆を突く。
(《雪》は使わない。卓也を守るために)
 生身の拳で―
「お前に勝つ」

 総司の決意の目と、真の冷冽な目が交錯した瞬間。

 ピチャリ。

 鮮血が一滴、跳ねた。
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