郷愁的な夢

雨の音

「夕太ちゃん、待って!」

私は夕太が走って小学校の方に行くのを追いかけていた。

夕太は足がとても速くて、サッカー部のエースを務めるくらいに機敏な動きと、切れ味のよい頭の働きでチームをまとめあげていた。

「早くしろ!風菜!遅刻するぞ!」

夕太は息も乱さずに私の方の手を引いていた。

「だって、夕太ちゃん、早いんだもん。あ!」

私は滑って地べたで転んでしまった。

「おい、大丈夫か?」

夕太が手を差し伸べると、私は自分で立ち上がった。

「大丈夫!」

私は笑ってみせると、夕太は少し溜息をついて鼻先で笑ってみせた。

「とにかく、気をつけろよ」

あのとき気づかなかったけれど、あの後私は息切れしないで走って行った。

夕太が私の足のスピードに合わせて走ってくれていたんだ。

「夕太ちゃん!」

「何だ?」

夕太は少しスピードを落として私の足を見ていた。

「ううん、何でもない。夕太ちゃんだけでも全力疾走すれば間に合うかなって思って」

すると夕太は笑ってこういった。

「ばーか、これが全力だ」

夕太が笑うと、私も思わず私も笑っていた。

途中でいつもの友達と合流。

水城君だ。

夕太とは仲が良くて、物静かなんだけれど、いつも遅刻してくる子だった。

「水城君!おはよ!」

私が手を振ると、ちょっとだけ手を挙げて挨拶してくれた。
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