未来からの贈り物
つい形から入ってしまう僕はとりあえずワインを注文する。


「今日はどうしたの?何かいつもと違うわよ。」


彼女はそう言って、少し落ち着かない様子で店内を見渡している。


僕はポケットの中に手をいれ、小さな箱をそっと握りしめた。




『早まらないで』




一瞬頭をよぎったが、僕には彼女以外考えられない。


その言葉をかき消すかのようにポケットからプレゼントを取り出し、彼女の前に置いた。


すると彼女は少し驚いた顔をした。


数秒間沈黙が続き、彼女にいつもの笑顔が戻った。


胸につかえていた重たい何かがスーッと消えていく感じがしたけど、心臓の動きは更に早くなっている。



早まらないで



決して早まったわけではない。


僕は人生において、最高に素晴らしい選択をしたのだ。


なによりも彼女の笑顔が心から僕にそう思わせてくれた。


< 26 / 41 >

この作品をシェア

pagetop