信心理論
「ねぇ、少しだけ。良いでしょ?」


目の前で、悪戯な笑みを浮かべる女性。

「うわッ!!!!!!」



音もたてず、一瞬で彼女は僕とドアの間に現れた。


僕は、驚きと共に2,3歩後ろへ足をずらす。

「何なんだ??!!!お前!!!!」

とっさに身構えたその格好は、女相手には決して不要であるにも関わらず、僕は彼女が次に唇を開くまでその体制から動かなかった。

「何……ッて、まぁ普通の人間じゃぁないわね。」



ケラケラ、と甲高い笑い声が響く。

「人じゃない、って…。」


自問とも自答ともとれる僕の呟きは、風が揺らした葉の音にかき消された。


「私はもう、魂だけの存在。つまり、幽霊ってことよ。」


またも彼女は、ニコリと意地悪気に笑った。


「馬鹿馬鹿しい…仮に君が、ゆ…幽霊だとしても!何でそんな――」


僕の声は、またもかき消された。


今度は、
彼女の声に。


「会いたい人が居たの。」

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