【完】イケメン*眼鏡*ランデヴー

愛の中に笑顔がふわり

玄関先までドタドタ、と走りサンダルを右足に引っ掻けたところでふと思い、血の気が引く。



「今日…………タンホイザーの再演じゃん!」



今すぐ会いたいのに、あのほんわりした無表情を見たいのに、あの包み込む掌に触れたいのに。



この間は永太の車で行ったから経路を知らない。



「ど、どどどどうしよう!えっと、バス乗ってそれから……あああ、経路検索!うぎゃー!」



これまで移動は皆に任せっきりだった私は、どうしていいのか分からずわたわたしてしまう。



東京はそんなにいらないだろってくらいに電車が通ってるから、こんなに移動に困らないし。



どうしても会いたいのに…………澪ちゃんに会いたいのに、私って無力。



「………全く、貴方、人の家の玄関で何一人コントやってるの。邪魔でしょう?」



すっかり勢いを無くした私の後ろから、追い討ちをかけるように鬼畜のエロボイスが響き渡った。
< 220 / 248 >

この作品をシェア

pagetop