君のイナイ季節
「大丈夫?」

歩き方が、明らかにおかしい私を見て、拓海くんは心配そうにしていた。

「…う、うん」

笑ってみせるけど、引き攣っているのが自分でもわかる。

「…ごめん」

拓海くんはそう言って私を抱きしめた。

今日、私達は心身共に結ばれたけれど。

私には耐えられないくらいの痛みが。

拓海くんはずっと、『ごめん』を繰り返していた。

「大丈夫だよ。拓海くんこそ、気をつけて帰ってね」

そう言って私は天を仰いだ。

さっきから妙に空が明るいなと思っていたら。

今日は満月だったんだ。

拓海くんも空を見上げて

「わあ、綺麗だな」

そう呟いて笑みを浮かべた。

しばらく2人で空を見上げていた。

ずっと、2人仲良くいたい。

私は月に願った。
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