君のイナイ季節
「ライダーなんて、いつ転倒して激突したり、些細な事で死ぬか、わからない」

拓海くんはふと遠くの景色を見つめてそう言った。

「僕が知っているだけでも何人も、目の前から突然いなくなった」

私も遠くを見つめた。

「もし、僕がいなくなっても」

私を見つめた拓海くんは大きく深呼吸をして

「いつまでも僕に惑わされる事なく、これから先に出会う人を大切にして生きてほしい」

突然、別れを突き付けられた感覚に襲われて私の目から涙が溢れる。

拓海くんはそれを見ても動じる事なく話を続ける。

「真由ちゃんには幸せに生きてほしいから。僕の願いはそれ一つなんだよ」


拓海くんは目線を下に落とした。

冷たい風が拓海くんの少し長めの髪の毛を撫でていく。



切ない拓海くんの笑みが。

私の胸に突き刺さる。
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