君のイナイ季節
私は手に持っていた袋を思わず落としてしまった。



「…嫌なら、今のは忘れて」

拓海くんは淡々と言うと私の足元に転がっているゴミ入り袋を手に取ってさっさと立ち去ろうとしていた。

階段へ向かう拓海くん。

追いかけなきゃ。


嫌じゃないの。


お願い、待って!!!



駆け出そうとした瞬間。

体のバランスが崩れた。

ドスン、という音とともにスカートの中が見えるくらい激しく転んだ。

慌てて拓海くんが戻ってくる。

「大丈夫?」

そう言って私の上半身を抱き抱えるようにして起こしてくれた。

「ご…ごめん」

至近距離にある拓海くんの顔。

こんなに間近で見るのは初めてだった。

綺麗な目をしているな、なんてドキドキしながらそんな事を呑気に思いつつ。

「い…嫌なんて思ってないよ。そんな事は絶対にない」

ようやく振り絞って出した言葉がそれだった。
それと同時に私の目から涙がこぼれた。

緊張が一挙に弾け出す。



拓海くんは少し困った様子で私を見ている。
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