君影草
第一章
1 誕生日
「北河さん、コーヒーどうぞ」
「ありがとう」
コトン、と小さな音を立てて机に置かれたコーヒーカップのさきをたどると、
今年新しく入社した桜城奈々絵がいた
お礼を言いつつ顔を上げると、
うれしそうにふわりと笑う
途端、内側にゆるく巻かれた髪がそれに合わせて揺れる
今年の新入社員は顔で選ばれたんじゃないかってくらい当たりだそうだ
独身従業員はこぞって喜んだのは言うまでもない
その中でもこの桜城奈々絵は一、二を争う
確かに仕事はそこそこできるし、気配りもできる
顔もかわいい部類には入る
でも嫌味ではない
これはそこいらの輩が狙わないわけがない
「いいよな、北河は。いっつも奈々絵ちゃんにコーヒー貰えて」
奈々絵が去った後、隣に座っている同僚の水川智樹が羨ましそうに言葉をかけてくる
やっぱり人間顔かね、と独り言までつぶやいている始末だ
「ありがとう」
コトン、と小さな音を立てて机に置かれたコーヒーカップのさきをたどると、
今年新しく入社した桜城奈々絵がいた
お礼を言いつつ顔を上げると、
うれしそうにふわりと笑う
途端、内側にゆるく巻かれた髪がそれに合わせて揺れる
今年の新入社員は顔で選ばれたんじゃないかってくらい当たりだそうだ
独身従業員はこぞって喜んだのは言うまでもない
その中でもこの桜城奈々絵は一、二を争う
確かに仕事はそこそこできるし、気配りもできる
顔もかわいい部類には入る
でも嫌味ではない
これはそこいらの輩が狙わないわけがない
「いいよな、北河は。いっつも奈々絵ちゃんにコーヒー貰えて」
奈々絵が去った後、隣に座っている同僚の水川智樹が羨ましそうに言葉をかけてくる
やっぱり人間顔かね、と独り言までつぶやいている始末だ
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